結論から言いますと、退職金も財産分与の対象として請求することができるということなります。
さらに言えば、既に支給された退職金だけでなく、将来支給される退職金も請求することができるという事なんですね。
なぜ請求できるのかと言いますと、退職金は夫婦がともに築き上げた財産と見なされていて、
夫が退職金を貰えるのは妻が長年専サポートしたからと考えられているからです。
ただし、財産分与が認められるには、既に支給された退職金については「退職金が残っていることが前提」になりますし、将来支給される退職金については、「退職金が支給されることが確実に見込まれることが前提」という事になります。
そして財産分与を請求するときは、夫婦の共有財産は基本的に半分ずつに折半するという事になっています。
これは、財産の名義がどちらにあるかということは関係ありません
但し、話し合いの段階で双方が合意するのであれば、9:1でも自由に決められることができるという事になっています。
裁判まで行く場合、通常は、まずは「話し合い」から始めて、話し合いが不成立だった場合に調停による財産分与の請求をします。
そして、この調停が不成立となった時、裁判所による審判に移行することになっています。
1.既に支給された退職金の財産分与
この場合は、婚姻期間中に対応する退職金部分だけが財産分与の対象という事になります
従って計算式は、「退職金の額 x 勤続期間/ 婚姻期間」になります。
例えば、夫の退職金が1500万円で夫の勤続年数が30年、婚姻期間が20年の場合の財産分与の対象となる退職金は、「1500万円×婚姻期間20年÷勤続年数30年」=1000万円となります。
なので、この半分の500万円が妻への財産分与という事になります。
ではもし、夫の退職後に退職金を使い切って離婚する時には既に退職金が残っていなかったと言う場合はどうなるでしょうか
この場合は、財産分与の対象がないということになり、退職金を請求することはできないということになります。
但し、夫の浪費によって退職金が減ったと言う場合は、財産分与の割合等で考慮される可能性があるという事になります
2.まだ支給されていない退職金の財産分与
まだ支給されていない退職金について財産分与の請求ですが、実務上は退職金を受給できる可能性が高い場合に限り将来の退職金も財産分与の対象となるという事になっています。
では、退職金を受給できる可能性があるのかどうかわからない、と言う場合はどうなるかと言いますと、これは状況によって判断がわかれるということになります。
この「退職金を受給できる可能性が高い場合に限り」とは、何を根拠に判断されるのかと言いますと、以下の4つの状況を確認して、総合的に判断することになっています。
・退職金を支払う旨の規定があること
・勤務先の経営状況が良好であること
・長期間にわたって勤務を継続していたこと
・退職金支給時点までの勤務期間が短いこと
3.まだ支給されていない退職金の計算
まだ支給されていない退職金についての計算方法は2つのパターンがあります。
①現時点で退職したと仮定した場合
②定年退職時に受け取る予定の退職金をベースにした場合
どちらの計算式になるかはその時の状況によって総合的に判断されるので、一概には言えません。
まず①ですが、これは夫が将来もらう予定だった退職金ではなくて、離婚時にもし夫が退職したら退職金がいくらになるのかを計算して、それを元に対象となる退職金の金額を出すと言う方法です。
例えば離婚時の夫の勤続年数が20年で、夫婦の婚姻期間は10年の夫婦がいたとします。
もし、この夫が定年まで働いたら退職金が1500万円だけど、もし今すぐ退職した場合の退職金が800万円だったとします。
このケースの場合、①の方法で計算しますと、財産分与の対象となる退職金の計算は800万円×婚姻期間10年÷勤続年数20年 =400万円と計算します。
なので、400万円の半分の200万円が妻への財産分与という事になります。
一方②の方は、夫が定年まで働いた場合に受け取る退職金を元にして、対象となる財産分与の金額を出すと言う方法です。
計算式は、(定年退職時にもらえる予定の退職金 x 婚姻期間/勤続期間) ー 中間利息
この中間利息というのは、「早くもらった分だけ発生する利息」ということになります。
つまり、妻は本来の退職金の支給時期よりも早くもらうことになるので、その分の利息を差し引くと言考え方ですね。
4.「夫が退職金を隠すかも」と言う場合は
将来受給予定の退職金を夫が隠したり、あるいは浪費したりする可能性があると言う場合の対抗策として、退職金の仮差押えと言う方法があります。
この仮差押えとは、裁判などの判決が確定する前に夫が持っている財産の移動を制限することになります。
そのやり方は、まず最初に裁判所に申立書と言う書類を提出します。
そして裁判所から仮差押えの申立てが認められば、仮差押え命令が出され夫は会社から退職金を支払ってもらえない状態になります。
つまりこれで、夫が退職金を隠したり、あるいは浪費したりする可能性がなくなるということですね。
では、もし夫が退職金の金額を教えてくれなかったらどうすればいいでしょうか。
離婚時は夫婦間で対立しているため、実際、夫が退職金の予定額を教えてくれない場合がよくあります。
このような場合、個人で正確な退職金の金額を調べるには限界がありますので、多少お金がかかりますが、専門の業者や弁護士などに頼んで、調査してもらう方法が一番効率的かと思います。
#退職金 #財産分与 #熟年離婚
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